心の扉が思わず開く!話したくなるコミュニケーション・カード

【開発ストーリー②】自分史から脳波測定まで、込めたエッセンス


心の扉が思わず開く!話したくなるTOBIRA®カード。とってもシンプルなカードですが、その背景にはたくさんの汗と涙がありました。(その①はこちらから【開発ストーリー ①】その人の過去を今に繋ぐTOBIRA®カード
自分史に注目した後、どうやってカードに発展していったのでしょう。そしてある出会いによる新たな展開が。開発者の畑川郁江(株式会社健育社代表)が引き続き語ります。
 

「自分史」のエッセンスをカードに込める

─『自分史』ですか。本を書くということでしょうか?

畑川:
「自分史を読めば、その人の人生を知ることができますし、価値観が分かりますよね。そこで、自分史を学び「自分史活用アドバイザー」資格を取得しました。
ただ、自分史を本にして誰かに渡すというのは素晴らしいけれども、医療・介護の現場を考えたとき、必ずしも本でなくてもいいかなと。

大切なのはその人の価値観を知ること、それを周りが共有すること。自分史のエッセンスをもっと手軽に、気軽に聞けるようにする方法は?と考え、カードに行きついたのです。自分史をライターとして書く場合もインタビューで使えますよね。」

─なるほど。カードに着地するまでにはいろんなことがあったのですね。

畑川:
「カードにすると決まってからもいろいろありました(笑)。 最初はゲーム要素を強めに考えていました。昔を思い出すきっかけづくりとして、昭和〇〇年代に流行った歌とか、俳優さんの写真を見せてこの人が出ていた映画とか、いくつ答えられるか数で勝負!みたいな感じにして。

はじめから、高齢者に限らず、幅広い年代の方たちが使うことを想定していました。ゲーム感覚でとても盛り上がり、楽しかったですね。カードをしながら、これは回想法として使えるな、と手ごたえを感じました。介護施設などでカードを使って回想法をするのは、親和性がありますし。けれど、俳優さんの肖像権問題だとか難しい問題がでてきまして、写真などを使うのは断念しました。

次に、文字を使って昔を思い出してもらうのはどうだろう、と考えました。文字だけでも十分思い出せますから。ただ文字だけでは物足りないので、付加価値を付けました。

一つ目は、サイズを大きくすること。トランプなど一般的なカードだと小さめですが、大きくすれば多人数でも共有できる。そうすればイベントやセミナーのアイスブレイクにも使えるなど、用途が広がります。

二つ目は、コミュニケーションを良好にするきっかけ作りのツールとすること。カードを楽しみながら、その人の人となりが深く理解できれば、その後の人間関係が円滑になります。

三つ目は、ログとして活かすこと。書き残す、です。介護施設で使う場合、カードをやって得られた利用者さんのお話をストックしていけば、どのスタッフが対応しても、その人により合う話題でコミュニケーションできますからね。利用者さんそれぞれにカスタマイズされたコミュニケーションを、スタッフ間のばらつきなく提供するために活かしてほしいと考えました。」

─ログですか、それは良いアイディアですね。

畑川:
「手作業で記録するのは現場の負担になるでしょうから、自動で記録できるようにしたいと考えました。それから、回想法に効果があるというには、エビデンスが必要です。エビデンスとして何か可視化するには研究が必要ですし、あるいは、脳波を測定して可視化するとか…などと考えました。」
 

簡易型脳波測定器を開発したニューロスカイ小山さんとの出会い

─脳波測定といえば、頭にヘッドギアのようなものを着けて測るのですよね?

畑川:
「当時はその方法が主流でしたから、大学の研究室に協力してもらわなければと思っていました。が、なんと、もっと簡易的な方法で測れる装置が開発されていたのです。株式会社ニューロスカイさんの「MindWave」といって、ヘッドフォンのような機器で測れると知りました。

株式会社ニューロスカイさんに協力していただこうと、第2回日本橋メディカル・イノベーターズ・サミットで同社 執行役員 営業本部長の小山裕昭さんが登壇されているところに会いに行きました。

そのときの日本橋メディカル・イノベーターズ・サミットでは「医療分野と他分野の融合によるイノベーション」をいうテーマで、様々なフィールドで活躍する医療イノベーションのパイオニアが集結し、プレゼンテーションやパネルディスカッションなど、熱い議論を繰り広げていました。なかなか刺激的でしたね。

じつはその翌年、小山さんのご縁で第3回日本橋メディカル・イノベーターズ・サミットの事例プレゼンテーションで、私も登壇したという後日談もあり(笑)。

それはさておき、こうして小山さんと出会い株式会社ニューロスカイさんと協働することとなり、ある高齢者施設にご協力をいただいて利用者さんの脳波測定を試していただくことになりました。」

(どのように測定するのか、どんなデータが取れて何が分かるのか、などは別途小山さんと対談をしていますので、その記事をお読みください。後日公開予定。)
 

脳波測定で、興味の度合いが“見える化”される

─脳波測定とても興味深いですね。測定の詳細についてはこちらの記事を読むことにして、結果はどうでしたか?

畑川:
「衝撃的でした…!利用者さんにはまず、測定装置のヘッドセットをつけもらい、裏返した複数のカードから2枚を選んでいただきます。表に返して2つのキーワードからどちらかを選び、そのキーワードに関することをお話していただきます。ファシリテータがそれを聞きながら、質問したりして深掘りします。所用時間は5分間。話している間の興味度がグラフになって表れます。

グラフでは、選ぶ前から興味度の高い低いが分かるんです。大概高いほうのカードを選ばれましたね。つまり、感情が脳波にしっかり表れる、ということです。そしてお話ししはじめると、興味度の数値がすーっと高くなっていきました。」

─興味の度合いが可視化される、と。

畑川:
「これが介護現場でできたら素晴らしい!と思いました。小山さんと議論を重ねて、簡単に測定できるようアプリを作ることにしたのです。そしてアプリとヘッドセットとTOBIRA®カードの3点セットで販売することにしました。

アプリを作るために実際に動きだしたりもしたのですが、医学的なエビデンスを十分に得ることが厳しくなりまして…。商品化は難しいと判断しました。
ということで、アプリとヘッドセットは断念し、TOBIRA®カードのみを商品化したというわけです。」

─TOBIRA®カードは当初、カードとアプリとヘッドセットの3点セットという構想でしたか。それは面白い!しかし残念でしたね。

畑川:
「医学的なエビデンスは十分でないまでも、高齢者施設での脳波測定によりTOBIRA®カードの効果は確かめられましたので、自信を持ってお勧めできるようになりました。

それから、面白かったのは、脳波測定の過程でTOBIRA®カードのデザインが変わったことです。というのも、カードは見た目が楽しいほうが良いと思い、当初はハートマークがあったり色とりどりカラフルでした。
けれど小山さんから、カードに書かれている文字だけでなくハートや色自体にも脳は反応してしまう。コミュニケーションにおいてはノイズになってしまうので、できるだけシンプルな方が良いと進言され、現在のような黒い文字がメインのデザインになりました。

こうして、アプリとヘッドセットは断念しましたが、ニューロスカイさんのご協力を得て今のTOBIRA®カードが完成し、販売までたどり着きました。」


 

(開発ストーリー③につづく)この続きは後日公開します。お楽しみに!

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